確かに,これだけTwitter上ではデマが多い,問題だと言われている中でそんなこと言っても信じてもらえないのは無理もない. というわけで,ちゃんとデータで示してみます.
我々の収集した東日本大震災時のTwitterのデータの中から,3月11日~3月17日に投稿されたツイートのうち,1000件以上リツイートされたものを取り出して,その中身がデマかどうかを確認します. ちなみに,確認の方法は目視.いわゆる「根性マイニング」です.
データは全部で1983ツイートありました. さて,この中で明らかなデマはいくつあったでしょうか.
実は正解は12ツイートです.つまり,全体の1%にも満たない訳ですね.
もちろん,1000リツイート以下のツイートにはもっとデマが含まれていたツイートもあるでしょうが, 大規模に広がったツイートの中にはほとんどデマはなかったということです.
その12ツイートの内容は,
- 災害対策予備費が削減されていた
- 自衛隊機は支援物資の空中投下ができない
- 築地市場では魚が余っている
- 枝野官房長官が105時間ぶりに寝た
- 携帯の0か#を長押しすると防犯ブザーが鳴る
- 政治家等の動向
- コスモ石油の火災で有毒ガスが発生
- 千葉製鉄所で爆発
ちなみに,コスモ石油のツイートが1357リツイート,一番リツイートが多かった災害対策予備費の件が2ツイートあり,合計11062リツイートです.
2000近くのツイートを確認しましたが,デマを否定するツイートは多く存在していたが,そのデマ自体はそれほど多くリツイートされなかったという現状が見えてきます.
ちなみに,震災期間中に最も多くリツイートされたのは,こちらのツイートです.
知り合いの福島の方が、「被ばくで怖いのは、健康被害じゃなくて、差別」と仰っています。彼女は現在も福島にいます。どうか「自分は差別しない!」と胸を張って言って下さる方、RTを下さい。偽善でも、その数を見せて差し上げたいんです。当時で2万リツイート超.2012年12月現在では5万回もリツイートされています. 皆さん覚えていましたか?
ちなみに,これ以外に多かったのが都内での買いだめへの警告です.
買いだめをやめよう,買いだめするこんな恥ずかしい人を見かけた,ウエシマ作戦(どうぞどうぞと譲り合う)などが,当時大量にRTされていたようでした.皆さん覚えていましたか?私は忘れていました.
当時大部分を占めていたはずの内容を忘れて,デマがあったことだけを覚えているというのは,Twitter上でデマが出回ったぞという情報が多く存在したためかもしれません. 人間の記憶なんてその程度の曖昧な者である,ということかもしれませんね.
ちなみに,2012年12月7日に発生した地震で,Twitter上に「家に押しつぶされた」とツイートした高校生がいて「やっぱりツイッターはデマばっかりだ」という印象を持った人も多いかもしれません. でも,それ以外にデマはあったんでしょうか?少なくとも私が見た限りでは発見できませんでした.
ツイッターはデマが多いメディアなのか,それとも,そう思い込んでいるだけなのか.
データを分析すると見えてくる真実は多いです.
ツイッターを「デマ発生器だ」などと揶揄せずに,情報拡散に役立つソーシャルメディアとしての側面をクローズアップして,今後も発生するであろう震災に向けて,よりよい使いかたを模索していきたいものです.
そんな震災時のソーシャルメディアの利用に興味のある研究者はこちらまで.
ソーシャルメディアの基本特性をデータやモデルから明らかにしたい学生の皆様はこちらまで
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